欠落の人 – 書評 – iCon Steve Jobs

書評 | 土曜日 1月 23 2010 1:16 PM | コメント (0) Tags: ,

「ショブズのやったことをいくつかのルールにして、エピソードを2~3個くっつけたような本」
に感心した人にとっては役立ち、そうでない人は別に読まなくてもいい本です。

なんで役立つかといえば、コインの裏側が見えるからです。
ジョブズを本当の意味で参考にするには
コインの裏側まで引き受けなきゃいけないわけですが、
読めばこんな人が他にいないことが分かります。

人間的に強いとか弱いとかそういう問題でなく、
頭が良い悪いもあまり関係なく、欠落が半端じゃないです。

欠落がエネルギーを生むということは、
ジョブズ以外でも見受けられますが、
彼をみると幸運まで呼ぶことが分かります。

アップル、ネクスト、ピクサー、全ての時期において
実力とは無関係に見える(し、ある意味では無関係といえる)
幸運な出来事が起こっていますが、
誰にでも起こる可能性があったわけではありません。

こんなジョブズだからこそです。
「明確な目標がなくても、他人と違うポジションをとってしまう、変人だから。
あたれば一人勝ちするし、あたらなければ子供がびっくりするほど愚かなことをする」
誰にでも起こるわけがありません。

この一文がジョブズを端的に表しています。

スティーブとは、信念と猪突猛進の人である。だからこそ、慎重な人ならさけることをしてはひどい目にあうのだが、同時に、信念と猪突猛進の人だからこそ、慎重な人がみんないなくなったあとも、ひとりのこって時代を切り拓くことができるのだ。(P332)

憧れても無駄です。
大好きですけど、近くにいたいとさえ思わないです。(一度や二度なら)

ちなみに余談ですが、本書を読んでいて思い出したのは、
「神様の愛い奴」コメント
です。
そして、そうか奥崎先生に比べるとジョブズも常識人だな、と変な感心をしました。

iCon Steve Jobs: The Greatest Second Act in the History of Business
Jeffrey S. Young William L. Simon
Wiley
売り上げランキング: 17189

“差別化”につきる – マードック氏がGoogleのインデクスを拒否すると聞いて考えたこと

IT,インターネット | 月曜日 11月 16 2009 2:07 PM | コメント (2) Tags: , ,

メディア王MurdochがGoogleをやっつけてネット上の権力を検索から奪い取る方法

このTCの記事がすごく面白かったので、考察してみます。

前後の事情も含めた記事要約

新聞とか雑誌をメインにするメディア大手のニューズコーポレーションという会社があり、タイムズとかウォールストリート・ジャーナルといったニュースサイトを運営しています。
IT化の波に伴い、それらのメディアは苦境に立たされています。

そこで会長のルパート・マードック氏がGoogleのインデクスを拒否して、サイトを有料化しようとしています。

この件に関して、MahaloのCEO Jason Calacanisが述べたところによれば

MurdochはGoogleによるインデクシングを拒絶するだけでなく、Bingに有料で独占的にインデクシングさせるべきだ

そうすることで、Googleが苦境に立つだけでなく、

これまで検索エンジン側にあまりにも偏っていた‘ネット権力’みたいなものが、コンテンツサイト側にもやや、もしくは大幅に、傾くことになる

検索エンジンの現状

これは十分有り得るシナリオだと思います。

というのはよく言われていることですが、検索エンジンの「精度」「スピード」といった質的な観点では既にGoogle以外でも満足いくレベルのものを提供しています。

じゃあGoogleが使われ続けている理由は何かというと、「慣れ」「ブランド」「Gmailなど他のサービス」など色々言えると思いますが、端的に言えば

両者のサービスの品質が優劣つけがたいということになると、戦う前からGoogleの勝利は確定したようなものだ。

検索エンジン対決―Bing vs. Googleを実例で比較してみた

ということだと思います。
つまり「乗り換えるべき理由がみあたらないから、使い続ける」ということです。

コンテンツの逆襲

では本当に検索エンジンを乗り換えるべき理由はないのか。
「コンテンツ」という要素があります。

それはTwitterがBing、Googleにフィードを売った(無料じゃない!)ことでも分かりますし、さらに遡ると韓国NaverがUGCでGoogleを寄せ付けないこともそうです。

コンテンツの有無が、検索エンジンの競争要因になる。
そうなればパワーバランスがコンテンツ側に傾くのは、当然のことです。

重要なのは“差別化”

メディア企業の「人々にメディアを渇望させる能力」は、インターネット(Apple)によって打ち砕かれた。
それはメディアビジネスの利益の源泉であったが、完膚なきまでに破壊された。


インターネットはメディアの稀少性を作り出すこの能力…流通チャネルを自分で持ちそれらを狭くコントロールする行為…を破壊する。それどころか、それはあまりにも大々的な破壊なので、メディア企業が利益を得るためのもっとも基本的な仕組みが危機にさらされているといえる。

(原文)
The internet disrupts this ability to create media scarcity. It is such a huge disruption, in fact, that it threatens the fundamental profit engine of the media business.

For The Future Of The Media Industry, Look In The App Store

コメント欄で頂いた、より良い訳を載せました。感謝。)

この主張は本質をついていると感じましたが、さらにいえばなぜコンテンツがAppleによって安価に横並びにされているかというと、「差別化できていない」の一言につきます。

高価だろうが、アクセスが面倒だろうが、「価値があって、他にないもの」に人はお金を払います。
と、いうか嫌々でもお金を払わざるを得ません。
それしかないので。

そんなにオリジナルで価値があるものは中々ありませんが。

そしてライバルが存在し、差別化要因がないと横並びにされ立場が弱くなるのは、コンテンツだけではありません。
検索エンジンだろうがプラットフォームだろうが同じことです。

マードック氏の記事を読んで、そんなことを考えました。

追記

こんな記事もありました。
Microsoftは新聞社に対Google戦争の軍用金を支援してBingの味方にするつもり

電子書籍市場におけるAmazon,Sony,Appleの争い

IT,インターネット | 金曜日 8月 14 2009 12:28 AM | コメント (0) Tags: , , ,

amazon-kindle

各社の戦略が興味深い、電子書籍市場です。

リードするAmazonが独自仕様を貫くのに対して、Sonyが業界標準仕様で対抗し、さらにAppleまで本格参入します。

AmazonのKindleは、音楽業界におけるAppleになれるのでしょうか。

参考記事:
Sony Plans to Adopt Common Format for E-Books

記事の要約

今年始めから136.2%の拡大、6月には$1400万の売上を記録した電子書籍市場。

売上の大部分はAmazonのKindle。
同社の戦略は「Kindleの本をできる限り多くのハードウェアで入手可能にすること」(Bezos氏)。

巻き返しをはかるSonyは、オンラインストアで売る本をePubフォーマット(業界標準仕様)に対応させる。
つまりSonyの電子書籍リーダー以外でも読める、というオープン戦略をとる。

また、Appleもタブレットコンピュータで電子書籍リーダー機能を提供するとみられており、出方次第でAmazonはそのクローズ戦略を考え直す必要がありそう。

考察

電子書籍業界は「ハードウェアの重要度が低い」ことで、特徴付けられるのではないでしょうか。

iPodと違い、ハードウェアとしての電子書籍リーダーを必要とする人は多くはないです。
ユーザーの鞄の中のスペース争いをするとしたら、多機能で電子書籍リーダー機能を含む可能性のあるネットブックやタブレットコンピュータに負けます。

Amazonはそれを承知で、ソフトウェアKindleをiPhoneやPalm向けに提供しようとしていますが、この時点でiPod—iTunesレベルの垂直統合は不可能です。
垂直統合ができない以上、Amazonはソフトウェア提供者でしかなく、ソフトウェアのみでSony他競合に対して圧倒的な優位性を築くのは難しいはず。

この記事では「Appleがオープン戦略をとれば、Amazonも従わざるを得ない」という論調ですが、むしろクローズで成功する可能性が(少ないけど)ある企業はAppleだけな気がします。