未来予測、読み物としては良し – 書評 – その数学が戦略を決める
読み物として、統計が直感を売り物にする専門家をぶっとばすストーリー性がすかっとした気分にさせてくれる。
ただ、あまりにも現時点での統計学が持ち上げられ過ぎている。
現実世界を科学的に分析する際には、統計学の知識もさることながら分析対象のフレームに関する知識が必要。
実際、今日のデータマイニングを発展させたのは学者ではなく、現場を知るマーケティング担当者だし。
テーマ毎に関する専門性に関しても言及はされているが、少ないしフェアな書かれ方ではない。
「絶対計算は正しく運用される限り専門家をいつでも凌駕する」と主張しているが、現段階ではそこまででもないだろう。
ただし、未来、私たちが実現しようとする社会では間違いなくそれ以上にコンピュータの意思決定がなされるはず。
そういう意味で、データ解析の様々な成功例は読み応えがあった。
未来に向けた本だと思う。
あと非本質的な話だけど、統計的思考を叩き込まれている娘アンナとのやりとりはおかしい。
イアン「スリーピングジャイアント登山路を何回登った?」
アンナ「六回」
イアン「その推計の標準偏差はいくつ?」
アンナ「二回…さっきの平均値を八回に訂正したいんだけど」
筆者の説明は以下。
標準偏差というのは、「±標準偏差×2の中に95%の試行が入る」ということ。
なので、はじめの予想「登ったのが六回で、標準偏差が二回」ということは二〜十回の確率95%ということ。
アンナは明らかに二回以上は登っていると気付き、幅が四〜十二回となる八回に訂正した。
これこそ「直感でなく、数学の勝利だ!」
「おかしい」と思う理由。
標準偏差は正規分布(左右対称)を前提としているが、アンナが山に登った数の予測値は正規分布より右側に付置されるから。
直感的に分かるように、もう少し例を極端にしてみる。
アンナが始めに四回と予想し、標準偏差を二回としたとする。
つまりゼロ〜八回となる確率が95%ということ。
イアンは答えを知っている。
答えが「八回」だったら、あまり良い予想とはいえないが、まぁ間違いではないだろう。
しかし、答えが「ゼロ回」だったら「おいおい」となる。
「一度も登ったことがないのに、四回とか標準偏差が二回とか言ってる」と。
このように、このケースでは実際の登山回数が予想よりも左側にふれることは考えにくい。
chinneng