前半は早慶など難関私大の学歴のカラクリを解き明かす内容で、
個人的に初見の事実が多く、読み応えがありました。
後半は日本的雇用システムが意外に効率的であるという内容で、
後述するようにイマイチな印象。
海老原 嗣生
朝日新聞出版
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早慶の偏差値偽装
前半は
「難関私大なんて幻想ですよ」
という主張です。
私は学歴(早大文)に誇りもコンプレックスもないので
自分の学歴に関して思いを馳せることはありませんでしたが、
以下のような学歴ビジネスの話として興味深かったです。
「私大の偏差値は国公立に比べ割高になる」というお話。
英国は全受験者が受けますが、
多くの私大で不要な理系科目は学力の高い人間が多いです。
このように科目毎に、受験者の実力が異なります。
ということは平均からの偏差を表す偏差値の性質上、
「レベルが低い人が多いと、相対的に高い値がでる」
というのが私大の高偏差値のからくりです。
さらに言えば早大なんかは社会(地理or歴史or公民)も必要ですが、
それすらも無くして英国の2教科のみで高偏差値を演出した大学があります。
本には具体名が書いてませんでしたが、おそらく立命館アジア太平洋大学のことです。
私大文系で最難関の慶応法学部が偏差値66あたりでしたが、
偏差値だけでいえば立命館アジア太平洋大学という
聞いたこともない大学がぶっちぎりの72でした。
私は受験期に「偏差値72ってむっちゃカッコええやん!」
と思った記憶がありますが、そんな仕組みがあったんですね。
さらに私大の偏差値操作は続きます。
偏差値を上げるためには、よっぽど優秀な人間以外は落とす必要があります。
ただし落とすと人数が減り、授業料が入ってこなくなるという、痛し痒しです。
そのジレンマを解決するソリューションが、AO入試と指定校推薦です。
一般入試以外で人数を確保して、一般入試を絞ることで高偏差値を演出します。
(早大政経に一般入試で入るのは全体の40%)
さらに早大は、既存の政経や法の人数自体も少なくして、
新設学部をつくることで偏差値と学費収入のバランス問題を解決しています。
慶應は、薬学部、SRCなど既存学部とカニバらない
学部を新設することで学生の数を確保しています。
ただこちらは入試に小論文を課すなど、
いまだに名門私立の面目を保っていると言えるかも知れません。
どちらにせよ私大がやってることは、詐欺みたいなものです。
中身の品質を落としながら、外見だけを整えています。
難関私大だって、過去の遺産を食い潰しているだけです。
まさに部分最適!ノンフューチャー!
システムを凝縮しながら適性サイズを探るわけではなく、
一気にシステムを崩壊させる方針をとるというのは、
人間の性なのかも知れません。
個人的には、それでいいと思いますが。(学歴とかどうでもいいので)
このパートは大学の経営戦略がみえて、楽しかったです。
「就職」より「就社」がいい?
後半はびみょ。
「『就社』じゃなくて『就職』しよう」
と大学の就職課で言われるようなイマドキの言説、それを批判してます。
曰く、学生に就職という判断は難しい。
であれば社風が合う会社に就社してからジョブローテーションで、
職を見つければいい、というシステムには合理性がある、と。
上の説明が可能ということは分かります。
ただ続いているシステムには、全体最適ではないとしても
上の偏差値偽装のように部分的には合理的な理由があるに決まってます。
就社を始めとする日本的システムが立ち行かなくなっているのが、
昨今の低迷とは言えないのでしょうか。
その疑問に対しては、
(不況など含め)買い手市場になれば
優秀な学生が中小企業に行ったり、フリーになったり、
異能な学生が大企業に入ったりする(←ロジック不明)そうです。
そこで新しい経営者が育つから、問題ないんだ、と。
確かにその説明は可能ですが、かといって
他の選択肢を捨てる理由は述べられていません。
要するに著者は、勝間和代女史や門倉貴史氏をはじめとする
イマドキのアメリカナイズされた考え方が
「耐えられないほど軽い」と言いたいそうです。
この問題に関しては私は定見がありませんが、
とりあえず著者の批判が「耐えられないほど軽い」ことは理解できました。